B型肝炎ウイルスとは?発症する疾病等についてアディーレ弁護士が解説

「もしかしてB型肝炎ウイルスに感染したかもしれない。B型肝炎ウイルスに感染するとどうなるの?」

B型肝炎ウイルスは、血液や体液を媒介として感染するウイルスです。
また、B型肝炎ウイルスに感染した場合、急性肝炎や、慢性肝炎、肝硬変等の疾病を発症させる危険性があります。

本記事では、

  • B型肝炎ウイルス
  • B型肝炎ウイルスに感染した場合に発症するおそれのある疾病
  • B型肝炎給付金

についてアディーレ弁護士が解説します。

B型肝炎ウイルス(HBV)とは?

B型肝炎ウイルスとは、肝炎等を発症させるウイルスです。

B型肝炎ウイルスに感染すると、肝臓の細胞にウイルスが入り込み、遺伝子に組み込まれてしまいます。
大人になってからB型肝炎ウイルスに感染した場合、免疫が十分に発達しているため、免疫機能によって短期間のうちにB型肝炎ウイルスは体内から排除され、通常は短期間(6ヶ月未満)だけ感染するにとどまります。

これに対して、幼少期にB型肝炎ウイルスに感染した場合、免疫が十分に発達していないため、ウイルスを体内からうまく排除することができずに、長期間(数十年~生涯)に渡って感染したままになってしまいます。この状態をキャリア(持続感染者)といいます。

B型肝炎ウイルスの感染経路

B型肝炎ウイルスは、血液や体液を媒介として感染するウイルスです。次のものがB型肝炎ウイルスの感染経路の典型例であるといえます。

【集団予防接種等における注射器の使い回し】
B型肝炎ウイルスは血液を媒介として人に感染する危険性のあるウイルスです。

集団予防接種を受ける人の中にB型肝炎ウイルス感染者がいた場合、B型肝炎ウイルス感染者の血液が注射器の針や筒に付着することになります。そして、その注射器の針や筒が使い回されてしまうと、この付着したB型肝炎ウイルス感染者の血液を媒介として、他の人もB型肝炎ウイルスに感染してしまいます。

【母子感染】
B型肝炎ウイルスに感染した母親の産道や胎内で子どもに感染してしまうことを母子感染といいます。
新生児は免疫機能が未熟のため、B型肝炎ウイルスを体内からうまく排除することができず、そのほとんどがB型肝炎ウイルスに持続感染することになります。

【性交渉】
B型肝炎ウイルスは、体液にも含まれます。そのため、B型肝炎ウイルス感染者との性交渉は感染経路となります。

【生活上の感染】
B型肝炎ウイルスは、汗、涙、唾液、粘液、排泄物にも存在し、これらを媒介として人に感染することがあるとの報告がされており、父子感染などの家族内感染や集団生活においても感染することがあります。

B型肝炎ウイルスに感染した場合に発症する疾病

B型肝炎ウイルスに感染すると、次の疾病を発症するおそれがあります。

急性肝炎(劇症肝炎)

B型慢性肝炎

肝硬変

肝がん

(1)B型急性肝炎(劇症肝炎)

B型急性肝炎とは、B型肝炎ウイルス感染後、一時的に肝細胞に炎症が発生する疾病です。
 B型肝炎ウイルスに感染後、数ヶ月の潜伏期間を経て、全身倦怠感、吐き気、食欲不振、発熱、皮膚や眼球に黄疸等の症状が出ることがあります。

これらの症状は、数ヶ月以内に回復し、肝機能も正常値へ回復するのが通常です。

急性肝炎はまれに劇症肝炎に発展します。

劇症肝炎は、急性肝炎が急激に悪化し肝細胞の破壊が進行する疾病です。全身倦怠感や吐き気等の他に、意識障害(肝性脳症)を伴うこともあります。致死率が極めて高い重篤な疾病であり、場合によっては肝移植が必要になります。

(2)B型慢性肝炎

B型慢性肝炎は、B型肝炎ウイルスの持続感染者のうち約10~20%の方が発症する慢性肝疾患です。
 大多数は特に症状があらわれません。

また、急性肝炎や劇症肝炎と異なり、黄疸が発生することはまれです。
肝炎の慢性化によって、肝細胞の破壊、再生が繰り返された結果、肝臓の繊維化が進み、肝硬変や肝がんへと発展する危険性があります。

(3)B型肝硬変

B型肝硬変とは、B型慢性肝炎等の進行により、炎症を修復するときに発生する「繊維(コラーゲン)」というたんぱく質が増加して肝臓全体に広がった状態をいいます。
 主な症状は、疲労感、全身倦怠感、黄疸、腹水等ですが、自覚症状を伴わないことも多くあります。
また、肝硬変は、肝性脳症や食道静脈瘤、肝がん等の重篤な合併症を起こす危険性があります。

(4)肝がん

肝がんとは、肝臓内に発生した悪性新生物をいいます。
肝がんには、肝臓内の肝細胞にがんが発生する肝細胞がん、肝臓内の胆管にがんが発生する肝内胆管がんがあります。
原発性肝がん(他の臓器等から転移したがんではない、がんのことをいいます)の約90%が肝細胞がんで、約10%が胆管がんです。
肝がん特有の症状というのは少なく、進行した場合は、腹部圧迫感や痛み等の症状が発生することがあります。

B型肝炎ウイルスの持続感染者の場合、慢性肝炎を発症し、これが発展して肝硬変となり、最終的に肝がんとなるという経過をたどる危険性があります。

また、B型肝炎ウイルス自体が肝がんを発症させる因子であり、B型慢性肝炎やB型肝硬変を先行することなく、肝がんを発症することもあります。

症状がなくともB型肝炎ウイルスは体内に残っている

症状がないからといって、必ずしも、この先も症状が出ないというわけではありません。

たとえ、症状がなくともB型肝炎ウイルスは体内に残り続けるのです。

これは、「治癒」した場合も同様です。現代医学では、治癒しても一度B型肝炎ウイルスに感染すると、B型肝炎ウイルスを完全に体内から排除することはできないとされています。

そして、「症状がない場合」と一口にいっても、次の2つの場合があります。

B型肝炎ウイルスが増殖する能力を抑えられている場合

既往感染の場合、B型肝炎ウイルスが増殖する能力が抑えられている状態が続く限り、B型肝炎ウイルスのせいで、肝疾患の症状を発症することはありません。

もっとも、免疫が低下するなどすると、再びB型肝炎ウイルスが増殖し、肝疾患を発症する危険があります。

B型肝炎ウイルスが増殖する能力を保っている場合

無症候性キャリアの場合、ウイルスが増える能力を持ち続けているため、現在は症状がなくとも、いつ肝疾患を発症してもおかしくはない状態ということになります。
定期的な検査をお勧めします。

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B型肝炎給付金について

B型肝炎ウイルスに持続感染した方については、所定の要件を満たすことによって、国から最大3600万円のB型肝炎給付金をもらうことができる可能性があります。
ここでは、B型肝炎給付金について解説します。

(1)B型肝炎給付金とは?

国が十分に指導しなかったために、1948年7月1日~1988年1月27日の間、乳幼児に対する集団予防接種等において注射器の使いまわしがなされていました。

このために、最大で40万人もの方がB型肝炎ウイルスに持続感染してしまったと推計されています。

その後、2006年の最高裁判決で、国の責任が裁判所により認められることとなりました。

そして2012年1月13日、国との間で裁判上の和解が成立すれば、被害者等に対してB型肝炎給付金等を支給することを内容とした法律が施行されました(「特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法」。以下、「特措法」といいます)。

(2)B型肝炎給付金の額

B型肝炎訴訟でもらえる給付金の額は、次の通りです。

※除斥期間等の起算点は、無症候性キャリアの方についてはB型肝炎ウイルスに感染したときから20年、それ以外の方については対象となる病態を発症したときから20年です。

死亡・肝がん・肝硬変(重度)20年の除斥期間等が経過していない方3600万円
20年の除斥期間等が経過している方900万円
肝硬変(軽度)20年の除斥期間等が経過していない方2500万円
20年の除斥期間等が経過している方のうち、現に治療を受けている方等600万円
20年の除斥期間等が経過している方で、上記以外の方300万円
慢性肝炎20年の除斥期間等が経過していない方1250万円
20年の除斥期間等が経過していない方で、現に治療を受けている方等300万円
20年の除斥期間等が経過していない方で、上記以外の方150万円
無症候性キャリア20年の除斥期間等が経過していない方600万円
20年の除斥期間等が経過している方50万円+定期検査費の支給等の政策対応

なお、B型肝炎給付金について、弁護士に依頼された場合、上記の表の給付金額とは別に、給付金の4%が訴訟手当金としてもらうことができます。

(2)B型肝炎給付金をもらえる人

B型肝炎訴訟給付金をもらうことができる人は、次の方です。

【一次感染者】

・満7歳となる誕生日の前日までで、
・かつ、1948年7月1日から1988年1月27日までの間に、集団予防接種等を受け、
・これによって、B型肝炎ウイルスに持続感染してしまった方

【二次感染者】

一次感染者から母子感染又は父子感染し、持続感染に至った方

【三次感染者】

二次感染者から母子感染又は父子感染し、持続感染に至った三次感染者

【相続人】

これらの方がお亡くなりになっている場合には、その相続人も代わりにB型肝炎給付金を請求できます。

【まとめ】B型肝炎ウイルスとは、肝臓の感染症を発症させるウイルス

本記事をまとめると次のようになります。

  • B型肝炎とは、B型肝炎ウイルスの感染により発症する肝臓の炎症のことをいう
  • B型肝炎ウイルスは、血液や体液を媒介として感染するウイルスであり、注射器の使いまわしや母子感染、父子感染が感染経路の典型例。
  • 免疫機能が未熟な幼少期にB型肝炎ウイルスに感染すると、B型肝炎ウイルスを体外に排出することができず、長期間にわたってB型肝炎ウイルスに感染し続ける状態になる。
  • B型肝炎ウイルスに感染すると、急性肝炎や、慢性肝炎、肝硬変等の疾病を発症させるおそれがある
  • 症状がない場合や治癒した場合でも、現代医療では、体内から完全にB型肝炎ウイルスを排除することはできないとされている。

特に、症状はないもののB型肝炎ウイルスが増殖する能力を保ったままの無症候性キャリアの方は、今後、肝疾患を発症するおそれがある。

  • 幼少期に受けた集団予防接種等によってB型肝炎ウイルスに持続感染した方や、その方から二次感染・さらに三次感染した方等は、国から最大3600蔓延のB型肝炎給付金がもらえる可能性がある。
  • これらの相続人の方が、代わりにB型肝炎給付金をもらうことも可能。

昭和16年7月2日~昭和63年1月27日の間に生まれた方は、一次感染者としてB型肝炎給付金をもらえる対象者かもしれません。
集団予防接種等において注射器の使いまわしがされていた可能性があるのは特定の地域ではなく、全国の地域だからです。
該当する方は、弁護士への相談をお勧めします。

アディーレ法律事務所では、B型肝炎訴訟・給付金請求に関し、着手金、相談料はいただいておりません。

そして、アディーレ法律事務所では、原則として報酬はB型肝炎給付金受け取り後の後払いとなっております。

なお、B型肝炎給付金の支給が決定すれば、和解協議にあたり、弁護士等に報酬を支払った方に対して、各給付金額の4%の額が訴訟手当金として国から給付されます。

B型肝炎訴訟・給付金請求に関しては、B型肝炎訴訟・給付金請求を得意とするアディーレ法律事務所にご相談ください。

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この記事の監修弁護士
大西 亜希子
弁護士 大西 亜希子

社会生活において問題が生じた場合に,本当なら解決のための手段がたくさんあるにも関わらず,手段があることを知らないがために辛く苦しい思いをされている方を見てきました。ひとりで悩まず,まずは弁護士にご相談ください。依頼者の方の立場になって,問題の解決のお役に立てるよう精一杯努力いたします。

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